第36回 日本ドイツ学会大会

開催日2020年6月21日(日)      

          オンラインで開催します  
                     

                              終了いたしました

      

参加費: 日本ドイツ学会会員、一般の方 共に 無料

フォーラム 10時—12時 

(フォーラム12は同時平行で開催されます)

フォーラム1  ドイツの気候変動教育の成果と課題               

司会 山本隆太(静岡大学)

気候変動はドイツの政治や経済のみならず,20191月に始まるFridays for Futureのような形で教育にも影響を与えている。そこで申請者らは,気候変動と教育に関するフォーラムを提案する。学校教育については山本(地理教育),濱谷(宗教・哲学教育)が,社会教育については高橋が報告を行い,ドイツにおける気候変動教育の成果と課題について,多角的に検討する内容である。


1) 地理教育における気候変動教育の過去と現在      

山本隆太    

  ドイツの学校における地理教育では,熱帯や温帯といった日本の地理でも学ばれる気候区分に加え,地学の内容を含むことから地質時代や氷河時代といった自然環境の変化(Klimaschwankungen)についても積極的に扱ってきた。人為的な気候変動(Klimawandel)が大きなインパクトを持つ近年では、気候保護(Klimaschutz)や気候適応策、エネルギー政策や気候移民といった内容が新たに加わった。また,グレタ・トゥーンベリの存在は,学習者主体の教育的文脈と合流し,「真の課題解決型学習」として地理教育に影響を与える可能性がある。本発表では,ドイツの地理教育における気候変動教育の過去,現在について報告するとともに,今後の可能性について考察する。


2) 宗教教育と哲学教育による気候変動問題への取り組みの可能性      

濵谷佳奈(大阪樟蔭女子大学)

  本報告は、人間の宗教、倫理、哲学教育の観点からの気候変動問題への取り組みに注目し、その可能性と課題を検討することを目的とする。具体的には、気候変動に関するカトリック学校でのプロジェクト学習や、NRW州における実践哲学科での学習内容を取り上げ、宗教教育と哲学教育にみられる気候変動学習の展開とその背景について検討する。その上で、宗教教育と哲学教育による気候変動学習の役割を考察してみたい。


3) 気候変動教育における社会教育施設の可能性-ドイツ・オーストリアの先進事例より-    

高橋敬子(立教大学)

     2019年10月、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州に気候変動教育(以下、CCE)の新しい拠点施設として、クリマアリーナが開設された。同州は、州独自のCCEの開発とそれを基にした教員研修、気候変動を地理の単元として取り入れる等、CCEの取り組みが進んでいる州の1つである。同様に,オーストリアのシュタイアーマルク州も,州独自のCCE教材作成や、子ども博物館等の社会教育施設と連携した教育を実施している。これら先進事例を取り上げ、CCEにおける社会教育施設の役割や展開の可能性について考察したい。


フォーラム2 研究報告フォーラム
                                                               


                                                司会 小野寺拓也(東京外国語大学)

1) 18世紀後半の北ドイツにおける音楽受容の実際
           言説と資料による同時代的視点からの考察

田中伸明(ヴュルツブルク音楽大学・博士候補生)
コメント:玉川裕子(桐朋学園大学)

  J. C. シュトックハウゼン(1725-1784)は音楽に関する著述の中で、例えばJ. ハイドンをはじめとした南ドイツ・オーストリア地域の音楽家による同時代作品を、北ドイツ地域のそれとは別の規範や趣味に基づくものと見做し、総じてそれらを低く評価するなど、従来の音楽史理解では捕捉し難かった言説を展開している。本発表では、こうした音楽受容意識が彼のみならず、当時の北ドイツ地域の教養市民層全般にも妥当するものであったということを、最近20年間で大きな進展を見せている資料研究の成果を参照しながら指摘する。


2) ドレスデンにおける "移民敵視" の背景   

岡本奈穗子(日本大学)
コメント:佐藤公紀(明治大学)

  ドイツ国内における移民の分布や様相、共生の状況には東西間で大きな違いがみられる。また近年、旧東独地域では移民排斥を唱える政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が高い支持率を上げ、2019年の欧州議会選挙や州議会選挙でも注目を集めた。中でもザクセン州の州都ドレスデンは 、地域住民運動「西欧のイスラム化に反対する愛国的欧州人」(PEGIDA)の発祥地として、移民(特にムスリム移民)敵視の活動が盛んなことで知られている。本研究報告では、ドレスデンにおける移民の様相を概観するとともに、移民敵視が活発化する背景を旧東独地域、ザクセン州、ドレスデンのそれぞれの歴史的・政治的・社会的観点から明らかにする。その上で、今後の課題を考察する。

 

シンポジウム

東ドイツの長い影:東西ドイツ統一から30年

13時30分-17時 

司会 秋野有紀(獨協大学)、藤原辰史(京都大学)

 

 東ドイツの終焉から30年を経った今もなお、東ドイツでの表現や経験は、ドイツ連邦共和国の政治、教育、経済、そして文化に引き継がれている。そんな中、1990年を近現代ドイツ史の達成点として特権的に語るのではなく、それ以前からの継続や、90年以降の「長い影」が現在にどう影響を及ぼしているのか、というように、諸学問の中での問いの立て方自体が変わりつつある。逆にいえば、東ドイツが連邦共和国に落とした30年に及ぶ「影」の実態を考えることは、新自由主義と格差、右派ポピュリストの勃興、社会の分断、あるいは新しい文化表現への挑戦といった現代ドイツの現象を知る上でも少なからぬ影響を与えると思われる。このシンポジウムでは、歴史学、文学、社会学という様々な分野の研究者が、東ドイツを主題にそれぞれの問題意識から発表をする。広く様々な専門分野の研究者が集まる日本ドイツ学会で、この節目の年に、東ドイツ研究の新たな道を探る出発点としたい。


1.社会変動と知識人の運命―統一後「大学改革」とDDR社会科学者の経験から

飯島幸子(愛知大学)

  本報告では「社会変動と知識人の運命」という問題設定のもと、ドイツ統一とDDR社会科学者をモチーフに、社会変動によって生じた社会システムの変更に対し、社会科学という学問、知を生産する場である大学、そして大学に勤務する社会科学者たちの経験を論じる。とりわけ、統一後の「大学改革」がDDR社会科学者たちのキャリアを大きく分かつ分岐点として機能した点に着目し、彼らの経験から現代ドイツが抱える問題を照射する。


2.東ドイツ史と二重の「終焉」―1990年からの東ドイツ史研究動向を中心に

伊豆田俊輔(獨協大学)

 1990年から30年が経つ。この30年という時間は、東ドイツ史研究にとって、いくつかの観点から特別な節目となる。第一に、この時間経過は、東ドイツ史研究が有した同時代史研究としての「特別さ」の終焉を意味する。そして第二に、戦後ドイツ史の「1945-1990年」という枠組みの終焉をも示唆している。こうした背景を踏まえ本報告では30年という時間の持つ意味を、二重の「終焉」という観点から探る。


3.文学における東ドイツの想起の語り―アイデンティティの政治とは別のところへ          

宮崎麻子(大阪大学)

  東ドイツ崩壊後、報道においても「記憶」をめぐる学術的議論においても「東ドイツ・アイデンティティ」が話題にされることが度々ある。対照的に、ひとつの立場に収斂しない不安定な想起の語りが様々に展開するという現象を、文学にみてとることができる。本報告では、1990年以降に出版された六つの文学作品をとりあげ、崩壊国家をめぐる語りの中でアイデンティティ要求からの逸脱や解放の契機がいかに現れているかを示したい。


4.余暇と抑圧のはざま―後期東ドイツ文学における芸術参与の社会条件   

矢崎慶太郎(専修大学)

  現代のベルリンは、グローバルな芸術都市の一つとなり、多くの芸術家たちが活動している。しかしベルリンの芸術活動は、統一後に初めて始まったわけではなく、1980年代ごろから政治的なリスクを顧みない若者たちが、アンダーグラウンド活動として培ってきたものでもある。本報告では、どのような社会条件において、西側諸国とは全く異なる政治体制にありながらも、西側と類似した自由な芸術活動が行われたのかを考察する

(2020/6/28更新)